明けましておめでとうございます。

早いもので08年ももう1ヶ月近くが過ぎてしまいました。


藤本里子

2007年を振り返る

昨年はMusica Rediviva にとっては画期的な1年でした。ここに少しばかり振り返ってみようと思います。

先ずわが社にとっては信じられないほど沢山のCDをリリースしました。4枚(!)です。

2月Travels with my Lute
(MRCD-013)
ルネサンス・リュート坂本龍右
4月From Castle and Cottage
(MRCD-014)
ニッケルハルパ
チェンバロ
トビヨルン・ネスボム
アンドレアス・エドルンド
5月Bach at Leufsta Bruk
(MRCD-016)
オルガン
(1728年、カーマン製作)
ハンス・ファーギウス
11月Sounds of Transparence
(MRCD-102)
オルガン フルート マリンバトリオ・トリブカイト・ペッターソン・ベリィ

年の初めには新しいホームページが出来上がり、ペイ・パルによる支払いを導入しました。以来、世界中から注文が簡単、安全にできるようになりました

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そして、2007年のハイライト。ニッケルハルパとチェンバロのコンビによる日本での演奏旅行です。ここに楽しかった演奏旅行を振り返ってみようと思います。

演奏旅行は10月1日から16日まででした。といっても私が演奏したわけではありません。春にリリースしたCDで演奏しているトールビヨルン・ネスボム(ニッケルハルパ)とアンドレアス・エドルンド(チェンバロ)を連れて行ったのです。私の役目は公演の企画、旅行案内、通訳、コンサートの司会などでした。

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公演一覧(2007年10月)

3-4日   ディナーショー 於・中田美術館、尾道
5日   コンサート(昼と夜の部) 於・門真市民文化会館、門真市(大阪)
9日   コンサート 於・丸亀市
10日   ディナーショー 於・高知市
11日   コンサート 於・倉敷市
12日   日本ニッケルハルパ協会発足記念コンサート 於・スウェーデン大使館
13日   コンサート 於・東京学芸大学
14日   コンサート 於・ロバハウス、立川(東京)


アンドレアスとトールビヨルン


立川で。コンサートを前に練習

コンサートは全部で10回。大阪2回、東京3回以外は地方公演でした。出かける直前にチェンバロのアンドレアスがぎっくり腰のひどいのをやって緊急入院。一時は公演は中止かと思いました。でもどうにか飛行機の旅をクリアーして、最初の公演先、尾道にたどり着きました。しかし、次の日朝ごはんに出てきた時は真っ青な顔で、背中が痛いと訴えています。それで午前中は土地の人の紹介で整体に行きました。それが素晴らしい先生で、二日間で「これで10日は持ちます」と言うところまで直してくださいました。アンドレアスもすっかり感激していました。

いよいよ演奏旅行です。尾道、門真(大阪)、丸亀、高知、倉敷と四国・中国地方を中心に廻り最後に東京に行きました。コンサートの内容もレストランでの食事を含めた「ディナー・ショー」というのから、スライドでスウェーデン事情や楽器の紹介を入れたもの、町の図書館の入り口や美術館の展示場を使ったものなど、いろいろなありました。門真市でのマチネ-は普通のコンサートに幼稚園児が100人混ざっていて、一番頭を痛めました。子どものコンサートにするわけにもいかないし、かといって20分もかかるバロック・ソナタの演奏もできないし。でも、子ども達には本物の音楽を聴かせてあげたいし。苦肉の策として演奏家にインタヴューの部というのを作りました。ニッケルハルパのトールビヨルンは子どもが4人、アンドレアスは2人いることなどを聞き出し、「じゃ、お子さん達には家でどんな音楽を聞かせてあげるの」と言う質問に対して、アンドレアスが「上の娘のジュリアがまだお母さんのお腹にいる時、僕はバッハのゴルトベルク変奏曲に凝って、さんざん練習していました。ジュリアが生れてから、この曲を弾くと、とてもポジティブな感情を示すのです。」という答えに幼稚園児もおじさんもおばさんもとても感激して、バッハの曲を聴いてくれました。

ニッケルハルパという楽器にはみんなびっくり。バイオリンに鍵盤がついている。ヨーロッパには中世から存在していたのだが、19世紀には不思議なことに世界広しと言えども、ウプサラの北方にだけ生き残った。などの説明に興味は増すばかり。そして共鳴弦が12本もあることから、音色が明るく、軽くなる。鍵盤が着いている構造上、ビブラートがかけにくい。それで本来のスウェーデン民謡以外にバロック音楽にも向いている。だからチェンバロとの相性がよい。という説明に納得してもらえたようです。特にニッケルハルパのやわらかい音は日本人の感覚にも合って、「なんか懐かしい音ですね」と喜んでもらえました。


ニッケルハルパ

今回の公演ではいろいろなチェンバロに出会うことが出来ました。学芸大ではフォン・ナーゲルの楽器でした。大阪、丸亀、高知、倉敷はツッカーマンのコピー、そして尾道、立川では久保田彰さんの作品を使わせてもらいました。尾道の中田美術館は今まで古楽の演奏会を何度も試みており、新しくチェンバロが注文してありました。これが私達の到着数日前に納付され、今回のコンサートはこのチェンバロのお披露目も兼ねていました。アンドレアスはすごく光栄に感じていたようです。製作者の久保田さんが、「好きなように自由にやらせてもらえました」というだけあって、音も仕様も息を呑むように美しいものです。ヨーロッパと日本、ルネッサンスと室町時代を合わせたような、ゴージャスな作品、チャンスがあったらぜひ、尾道でご覧になってください。


中田美術館のチェンバロ

東京での最初のコンサートは「日本ニッケルハルパ協会」の発足を記念したもので、赤坂のスウェーデン大使館が会場でした。日本には少なくとも30人ぐらいニッケルハルパを持っている人がいるようです。当日はそのうちの10人ぐらいが楽器を持って集まり、演奏会が終わってからみんなで合奏をしていました。スウェーデンにはよくある風景ですが、これこそ本来の音楽教育の姿ではないかとも思いました。先生と一緒に上手い下手にかかわらず、みんなで演奏します。そのとき先生は「セクンダ」と称する第二声をアドリブで弾いてくれます。和音が発生することから、音が急に豊かに聞こえます。楽しくなってもっと弾く。その間に知らず知らずのうちに弓使いなどのテクニックから、アクセントや独特の節回しなどを身に付けていくのです。


日本ニッケルハルパ協会のメンバー

今回連れて行った二人はクラシックもフォークもこなすコンビで、だれもが舌を巻くテクニックと同時に演奏に柔軟性があり、コンサートも回を重ねる毎に益々精彩を放ち素晴らしかったです。演奏以外でも付き合うのが楽な旅でした。結構のグルメで、関空に降り立ったとたん、トールビヨルンは「すし、すし」と叫び、おいしいすし屋に連れて行ってあげようと思ったのですが、残念ながら時間がありませんでした。3日目ぐらいからあまり「すし」と言わなくなったのは、日本の主催者側がその地方、地方のおいしいものを食べさせてくれるので、日本にはもっと美味しいものがあるらしいぞ、と気が付いたからでしょう。「かつおのたたき」をご馳走になった時など、「生の魚の部分と焦げた味の絶妙な調和」などと日本人がとろけてしまうようなことを言うものだから、みんな面白がって、いろいろなものを食べさせてくれました。高知では返杯ということを習い、なんとウワバミを二匹連れて歩いているだ、と気が付きました。ツアーの真ん中で3日間、完全にフリーの日が続き、2日は奈良の友人の家にホームステイしました。奈良公園で鹿を見て、春日神社をお参り、夜は家族と手巻きずし。このお宅は古楽を専門にしていて、ご主人はガンバを弾くので、3人でセッションをしたり、ガンバのレパートリーでニッケルハルパに合う曲を紹介してもらったりしました。次の日は琴平に出て温泉を堪能しました。二人は2時間も温泉に浸かっていました。金毘羅さんはお参りしなかったけれど、温泉町をそぞろ歩いて旅館で豪勢な夕食。一度はこういう経験をさせてあげたかったのです。


トールビヨルン・奈良公園で


コンサートが終わって


丸亀城

次の日からの7日間は毎日場所を変えてのコンサートでした。丸亀、高知そして倉敷。


K倉敷

東京は学芸大学、スウェーデン大使館、最後が立川。次の日は1日オフで東京見物のつもりでしたが、二人とも立川でお土産を買えば満足、ということなので、午前中に伊勢丹で買い物をし、午後からは荻窪に住んでいる音楽仲間、鍵盤奏者の武久源造さんを訪ねました。電話をすると、「アンドレアスに見せたいものがあるんだ、ウフフ」というので、何かと思って出かけました。それがバッハの時代に試作された「フォルテ・ピアノ」という楽器のコピーで、ピアノに近い音、ある程度強弱が出せる構造です。私にとってはバッハがこんな音を知っていたということはショックでした。源蔵さん曰く「この楽器はね、ドイツにオリジナルがあるんだけど、音楽家からはほとんど忘れられたような存在で、チェンバリストも興味を示さない。ずっと面白いとは思ってたんだが、なにしろ何も分からない。じゃ、コピーを作ってみれば分かるんじゃないかと思ってね」といかにもこの人らしい言い草です。作ってみたら、いろいろなことが分かってきた。バッハは絶対にこの楽器を使っていたと思う。これからいろんなことに使うんだ、と嬉しそうでした。昔からこの人はアンドレアスと2台のチェンバロのためのコンチェルトを録音する計画を立てていたのですが、その時は1台はこの楽器を使おうと思うとも言っていました。この新しい音の可能性を聞かせてもらってから、3人がムチャクチャ・セッションを始めました。3人ともアドリブのできる人たちなので、3つの音が壮絶に絡まりあう演奏で、私はソファーに寝そべって聴かせてもらいました。観客が一人ではもったいなかったです。源造さんはニッケルハルパの音を聞いて、バロック時代の楽器ビオラ・ダ・モーレに似ている。フォーク・ミュージックも弾けるこの人の演奏でビオラ・ダ・モ-レの曲を弾かせたら絶対に面白い。この次はそういうのもやろうよ。と嬉しそうでした。本当に音楽関係の仕事をしている冥利に尽きると思える瞬間でした。


源造さんのスタジオで

今回の講演旅行はスウェーデンの文化庁の補助を受けました。それと日本側でアレンジをしてくださった多くの方々の援助で成功裏に終わることができました。私も全部裏方をやってみて、はじめて色々な事務的な手続きなど分かり、よい勉強になりました。この次は…など既に考え始めています。

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下記のサイトでビデオが見られます。 www.nyckelharpacembalo.info.se

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08年の抱負

今年も色々な企画があります。

2月(発売予定) バッハ「フーガの技法」オルガン ベンクト・トリブカイト (1728年製作)
4月(録音予定) マーラー「なき子を偲ぶ歌」アルトマリア・フォシュストローム
8月(録音予定) アンサンブル・ペガサス・トウキョウ(ブラス・アンサンブル)

などです。ご期待ください!